モーツァルトを歌う


 今年の私のモットーは「新しい自分に出会う」。その第1弾として6月に行なったコンサートでは、イタリア・オペラに初挑戦し、大変ご好評をいただくことができ、私自身にとっても実り多いものとなりました。

 それに続く試みとして私の頭に浮かんだのは、モーツァルトでした。「えっ!モーツァルト?」「今まで歌ったことがなかったの?」という声が聞こえてきそうですね。はい、そうなのです。ドイツ・リートを学び始めた時、師事していた先生から「モーツァルトは難しいのでシューベルトからやりましょう」と言われ、その言葉のままシューベルト、シューマン、ヴォルフなど学ぶ中、ウィーン世紀末に傾倒し、その時代の作品に夢中になっているうちに、あっという間に年月が過ぎ・・・モーツァルトのページは空白のままになっていたのです。

 確かにモーツァルトは難しい。音楽の道に携わる者なら誰しも実感することでしょう。深い情緒も何もかも、表面上は単純明快に表わされているので、ごまかしがきかないのです。しかも音楽の中に遊びがある。こういうセンスは、私にとって一番遠いものでした、長い間。

 それが、イタリア・オペラへの挑戦を機に急に目が開けたというか、いろいろな変化があり、モーツァルトに近寄ってみたくなってきたのです。近寄ってみると、意外にも冷たく突き放されはしない感触。そして、だんだんモーツァルトの魔法にかかったかのようにおもしろくなってきています。ご存知のように、私は昨年まで4年間にわたってヴォルフの連続演奏会を行なってきたのですが、惚れこんで歌ってきたヴォルフに対して、モーツァルトとは恋をしているような感覚です。

 今、なぜモーツァルトか? それは、空白になったままのページを埋めるため、そして、ヴォルフという一方の極からイタリア・オペラというもう一方の極まで振り切れてしまった針を真ん中に戻すため。

 2005年1月30日に、〜モーツァルトに恋して〜 と題するコンサートを行ないます。「すみれ」「クローエに」など珠玉の歌曲たち、第3楽章のアレルヤがよく知られているモテット、3点Fまで使うコロラトゥーラの難曲、夜の女王のアリアなど、皆さんに楽しんでいただける曲をたくさん盛り込みました。
また、前回のご好評にお応えして今回も出演していただく、 ピアニスト
柴田かんなさんのソロにもご期待ください。

 2006年はモーツァルト生誕250年に当たるそうで、きっとさまざまなコンサートが目白押しとなることでしょう。今回の企画はまさに、その先がけとなるものです。世界中の人々に愛され親しまれてきたモーツァルトに、もう一度出会ってみませんか、木内朋子とご一緒に。

2004年10月3日

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