リサイタルを終えて


 去る9月27日の「ヴォルフ没後100年に寄せて」と題した私のリサイタルには、お忙しい中ご来場いただきありがとうございました。
また、準備の過程からリサイタル当日を含め、多くの方々のお力添え、温かいお励ましをいただきましたこと、心から感謝いたします。

 この4年間、ヴォルフに取り組んできましたので、好きな曲、歌いたい曲が山のようにあり、当初考えたプログラムは、コンサート2日分になると思われるくらい膨大なものでした。
これまでの私は、自分が歌いたいという気持ちだけが強すぎて、それを聴き手に押しつけていたように思います。今回、ある方の助言により、その考えを改め、初めてヴォルフをお聴きになる方も多勢いらっしゃること、全ヴォルフのプログラムというだけでも重いと感じる方も多いことを充分考慮し、選曲は何度も練り直しました。
最終的に決めたものは、ヴォルフの様々な面をステージごとに明確に打ち出せた点、起承転結があった点、自分でもかなり満足していましたが、聴いてくださったお客様の反応で「ヴォルフというと敬遠していたけれど、意外に聴きやすく楽しめた」というお声を多くいただいたことは本当に嬉しく、プログラミングの方針が良かったと自負しています。

 ピアノの古川泰子さんとは4年ぶり2度目の共演でした。
ヴォルフは初めて、とのことでしたが、その鋭い洞察力と感性でヴォルフの音をみごとに生み出してくださいました。
練習の過程から、古川さんとご一緒に音楽できることが楽しく、本番も一層その想いを強くして演奏できました。
何人もの方から「二人で音楽を創り上げている感じがした」とおっしゃっていただきました。
古川さんとの出会いに、改めて感謝します。

 お陰様で演奏の評判もよく、私自身、歌い切った充実感を味わうことができました。
ヴォルフのみ、という特殊な企画には、これまで少なからぬ批判がありましたが、初心を貫いて歌ってきたことを良かったと思います。
「私は私以外の何者にも成り得ない」という想いに、本番の前日、行き当たりました。
ヴォルフは今後もライフ・ワークとして歌っていきたいと思いますが、ヴォルフのみというコンサートは、今回をもってひとまず終了させていただきます。これまでお寄せいただいたご支援に深く感謝いたします。

次に取り組むものは、私の中では決まっていますが、それがいつ頃どんな形で皆様にお聴きいただけるかは、まだ定かではありません。
私が本当に歌いたいもの、そして皆様に楽しんでいただける要素を少しずつ採り入れていけるよう心がけたいと思います。
どうぞ今後もご期待くださいますよう、そして一層のご支援を賜わりますようお願い申し上げます。

2003年10月12日


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