ヴォルフ「スペイン歌曲集」に取り組む
今、なぜヴォルフなのか かねてから私がテーマとしている「ことばと音の結びつき」に焦点を当てると、ドイツ・リートの分野では、まずシューマンを挙げるべきでしょう。 「ことばと音の結びつき」の妙が彼の最大の特徴であるとすると、日本人が日本人の前で歌うには、ドイツ語という大きな壁があります。そこをあえてヴォルフのみによるコンサートをするからには、ちょっとした決意と工夫が必要でした。 すべて物事がソフティケートされている現代、音楽もスマートなもの、流麗なもの、聴く耳に心地よいものがもてはやされています。ヴォルフの音楽はそんな流れとは反対に、発作のように激しく、ゴツゴツしていて、心にぐいぐい食い込んでくるものです。そういうものに接することは、精神的にエネルギーを要します。しかし、時にはそんな体験をするのも悪くないのではないでしょうか。 私にとってヴォルフを歌うことは、 そして工夫とは・・・ 3回シリーズのコンサートに スペイン歌曲集は全44曲を男声と女声が歌い分け、演奏時間は2時間近くにも及ぶ大曲です。これを3回シリーズのコンサートとして企画しました。 vol.1 2000年11月5日 vol.2 2001年7月8日 vol.3 2001年11月25日 vol.1 とvol.2は恋愛をうたった詩に付曲された世俗的な歌曲をとりあげます。vol.3は宗教的な詩による聖歌曲 全10曲を、シリーズ初めて男声に共演いただき、この歌曲集本来の演奏スタイルをとりたいと思います。 こんなコンサートに このコンサート・シリーズは、歌い手・ピアニスト・お話の語り手が三位一体となって進めていくのを身上としています。そのため、時間的にも内容的にも演奏とお話が同等のウエイトをもちます。 ヴォルフの歌曲は全く無駄がなく、非常に短い中にいろいろな要素が盛り込まれています。そのため、ピアニストの役割の重要性も群を抜いています。一人のピアニストに3回通してご出演いただき緻密なアンサンブルを目指す方向性もありますが、私はこのコンサート・シリーズを実験的な試みをする場と捉え、毎回、新たな可能性に挑戦するという立場から、3回とも別のピアニストにご登場いただく方針をとりました。 そしてシリーズとしての一貫性は、お話の高橋徹さんにつないでいただきます。単なる楽曲解説的なお話でなく、ヴォルフを身近に感じられるような、かつ、多面的なヴォルフ像をご紹介くださいます。 これからのこと シリーズが無事完結した時には、スペイン歌曲集の全曲演奏に挑戦したいと思います。 ヴォルフの作品の中で、同じような演奏スタイルをとるイタリア歌曲集が日本でも時折全曲演奏されるのに比べると、スペイン歌曲集はあまり例がありません。ぜひぜひ実現させたいと意欲を燃やしています。 |
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