リサイタルに寄せて



  初のリサイタルから30年の月日が流れました。その間一体何をしてきたのだろう、と思いもしますが、よくもこんな難しい曲ばかり(聴く方の迷惑も顧みず)並べてきたものだ、とも思います。このようなプログラムを可能にできたのは、ひとえに素晴らしいご共演者のお力のお陰です。そして、これまで歩み続けてこられたのは、聴いてくださる方あってこそ、また、公演を支えてくださった方々、様々な面で応援してくださった多くの皆様のお陰であると、改めて深く感謝申し上げます。

 さて、今回のプログラムですが、何と半分を占めるのがブラームスです。ブラームスは私にとって一番遠い存在で、これまでコンサートで歌ったことは全くありません。1年数か月前のある日、行き詰まりを感じていた私の胸に突然「そうだ、ブラームスがあるじゃない!」 という想いが湧きました。その時浮かんだのは、ブラームス歌曲の中でも大曲と言われる”Von ewiger Liebe 永遠の愛について“でした。歌ってみると、あれほど敬遠していたのが嘘のようにしっくりとくるものを感じたのです。それから加速度的にブラームスを紐解いてきました。
 そして、シューマンはブラームスとは反対に私が最も親しみを感じてきた作曲家です。30年前のリサイタルもシューマンの「女の愛と生涯」でスタートしました。そんなシューマン作品との関わりの中で意外にもこれまでまとまって歌う機会のなかった「子どものための歌のアルバム」から6曲の愛らしい、まさに珠玉の作品と言える曲を選びました。
 マーラーは、これまで何度か登ろうとして途中まで登っては諦め…、という経験をしており、私にとって憧れでもあります。マーラーの歌曲にはこの世とあの世のあらゆるものが表現されています。ブラームスを歌うことによって見えてきた面もあり、新たなアプローチで臨みます。

 共演のピアニストは松田祐輔さんです。昨年の日本ドイツリート(歌曲)コンクールで最優秀共演者賞を受賞しておられる実力の持ち主で、共演者から絶大な信頼を寄せられる若きマエストロです。

 会場の浦安音楽ホールは、昨年オープンした、素晴らしい音響と落ち着いた内装を持つ、ドイツリートに最適な空間です。このホールで演奏できることを幸運に思います。そして、これが300席規模のホールでリサイタルを行なう最後の機会になることをお伝えしなくてはなりません(まだまだこの道を歩み続ける所存ですが)。30年の感謝を込めて精一杯演奏させていただきます。お誘い合せの上お出かけ頂ければ、こんな幸せなことはございません。心よりお待ち申し上げます。

                            


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